大判例

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東京高等裁判所 昭和53年(行ケ)12号 判決

一 請求原因事実中、本願発明について、出願から審決の成立にいたるまでの特許庁における手続の経緯、発明の要旨、概要、目的、作用及び効果並びに審決理由の要点は、いずれも当事者間に争いがない。

二 そこで、原告主張の取消事由の有無について検討する。

1 引用例の成型ブロツクについて

引用例の記載事項が審決認定のとおりであることは、原告の認めるところであり、成立に争いのない甲第三号証(引用例)によれば、引用例は林業用の苗を得るための成型ブロツク自動製造に関する発明であるが、その成型ブロツクは、播種、育成用の容器であつて、移送コンベヤーである作業台上の始端部に供給された後、順次その内部に土詰、播種、覆土という一連の作業が行なわれるものであることが認められる。

他方、当事者間に争いのない発明の要旨及び概要によれば、本願発明は、田植機用の苗を得るための種籾の自動播種装置に関するが、その苗箱は、播種、育成用の容器であつて、移送コンベヤー上の始端部に供給された後、順次その内部に土詰、均平、播種、覆土等の一連の作業が行なわれるものであることが認められる。なお、原告は、本願発明の苗箱がプラスチツク製で四角形状である旨主張するが、その発明の要旨には、苗箱の材質、形状について何の限定もないことからみても、右主張は採用することができない。

そうすると、引用例の成型ブロツクと本願発明の苗箱とは、播種の対象物に差はあるが、少なくとも、自動播種装置という観点に立つ限り、林業用の苗であれ、種籾による苗であれ、その技術的思想に本質的な差異があるとは考えられないし、ともに播種、育成用の容器であつて、これにほぼ同種の一連の作業が行なわれる点で共通している以上、両者は、自動播種装置における同等の要素であるということができる。

したがつて、審決が、前者をもつて後者に相当すると認定した点に誤りはない。

2 本願発明の灌水装置について

前掲甲第三号証の記載と本願発明の要旨を対照すると、本願発明と引用例のものとの間には、結局、審決認定の一致点及び相違点があることが明らかである(もつとも、右相違点の存在については争いがない。)。

ところで、審決は、引用例には、本願発明における「覆土装置の後位に灌水装置を設けた」構成がないことを相違点として認めながら、「覆土の後で灌水を行なうことは農作業において通常行われている」ことを理由に、本願発明の右構成に格別の発明力を要しないとする。

しかし、田植用の苗を得るための農作業において、播種、覆土後における灌水が通常の技術であつたことについては、これを認めるに足りる証拠が全くなく、かえつて、当事者間に争いのない本願発明の目的、作用及び効果に成立に争いのない甲第二号証の二(本願発明の補正明細書)をあわせると、(一)本願発明のような、田植用の苗を得るための種籾の自動播種装置においては、一般に、苗箱内の床土の高さを一定にするために、床土を多目に供給したうえで、余分の土を除くという方法によつて、床土均平の作業を行なうものであるから、排除された床土が苗箱外に大量に散乱すること、(二)従来の同種装置においては、床土を均らした直後に灌水するので、その灌水が散乱した床土にかかつて、これを濡らしてしまい、その床土を再度使用するには、これを乾燥してもとの状態にしなければならないという欠点があつたこと、(三)本願発明はこの欠点を解消することを唯一の課題としたものであつて、移送コンベヤー上の土詰、床土均平、播種、覆土という一連の作業の最終段階に灌水装置を設ける構成を採つたことにより、床土均平装置によつて苗箱外に散乱した床土は、灌水によつて濡らされることなく、当初の乾燥状態のまま保持されるので、これを掻き集めて直ちに再使用に供しうるという従前装置にはみられない効果を収めるものであることが認められる。

右認定によれば、審決が、前掲の理由によつて、本願発明における灌水装置の構成についての発明力を否定し、その効果も予測しうる程度であるとしたことは、明らかに誤りであるといわねばならない。

3 以上のとおりであるから、本願発明について、引用例及び農作業における通常技術との対比上、その進歩性を否定した審決は、その余の取消事由を判断するまでもなく、違法であつて、取消を免れない。

三 よつて、本件審決の違法を理由にその取消を求める原告の本訴請求を正当として認容する。

〔編註〕 本願発明の要旨は左のとおりである。

苗箱(2)を載置して一定方向へ移送する移送コンベヤー(1)の上部に、この移送コンベヤー(1)の始端部側から順次、苗箱自動供給装置(4)、床土の土詰装置(6)、土詰された苗箱の床土面を苗箱上縁下一定高さに均平にする床土均平装置(20)、自動播種装置(11)、自動覆土装置(14)を配設し、この覆土装置の後位に灌水装置(15)を設けてなる苗箱の自動播種装置

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